ボクの経験値

3.

それから彼とは、挨拶を交わすくらいの仲になった。
なんだか不思議な気分だった。
というのも、彼は友達という友達がいないようだったからだ。
いつも一人だった。
廊下ですれ違うときも、教室を覗いたときも。

いじめられてるわけじゃないのは分かった。
なぜなら、みんな彼の魅力がそこにあることを暗黙の了解で承知していたからだ。
一人でいる美少年。
それだ、そこに彼は周りから魅力を見出されていた。

でも、ボクは、違うと思っていた。
彼は一人になりたいのか、それとも寂しいのかは分からなかったけど、ボクから見た彼の魅力は他にあった。
それはやっぱり、あの時の”風”のこと。
彼はきっと不思議な力を持つ、魔法使いか何かなんじゃないかと、その時のボクは思っていた。

「ねぇ…」

ある日、ボクは彼に話しかけた。
下校するとき、げた箱にいた彼を見た途端、何だか知らぬ間に言葉が出ていた。
彼は何も言わずにボクのほうを見た。

「一緒に帰ろうよ」

道は途中まで一緒だと知っていたから、前から誘おうとはしていた。
いつもいつも、後ろからついていっているみたいに帰っていたから。
彼はニコリと笑うと、ただ、こう言った。

「いいけど、大丈夫?」
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