成立事項!

髪のセットが上手くできないせいか、癖毛の人たちにとっては、辛い時期極まりないことだろう。

癖毛、というわけではないが、栖栗もその一人だった。

ショートカットのせいか、髪が上手くまとまらずに、ぼわぁっと広がってしまう。


それはもう、ぼわぁっと。

それはもう、酷すぎる有様に。


だからなのかは定かではないが、栖栗は五月の終わりから、ずっと機嫌が悪かった。


「今日も雨なんて信じられない‥!」

「‥つっ梅雨だから、仕方ない、よ‥っ!」


栖栗は広がりきった髪を押さえるように、頭に手をやると、恨めしそうに窓の外を見つめた。
そんな栖栗の機嫌を何とか取ろうと、瞳は必死に「梅雨だから仕方ない」を連呼する。
結局はそれが、栖栗の機嫌を損ねることになるのだが。


「‥‥じめじめするのは梅雨だから仕方ないわ‥でも、髪が広がるのだけは嫌。断じて嫌‥!」

「あ‥ぇ、えっと‥あ、あんまり分からないよ‥っ」

「‥フォローはいらない」

「‥ち、違うよ!‥だってあんまり分からないしっ!手、離してみてよ!」

「‥‥よかろう」


栖栗は、瞳の言葉に怪訝そうにしながらも、そっと手を取る。

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