成立事項!
瞼の裏に思い浮かぶのは、真っ黒な空、雨音が絶えない街。
真っ直ぐに降る雨の下、さした傘、二人。
瞳は、酷く懐かしい気持ちに頬を緩めた。
それに浸りながら、うっすらと目を開けると、瞳は言った。
「あ、あのね‥皆、毎年この季節になると、生徒会長との相合い傘を狙うんだって‥」
「ふぅん」
英が美形、だということは栖栗自身、分かっていたし、女子たちが騒いでいたことも知っていたから、さほど驚きはしなかった。
「でも、生徒会長は女の子と一緒に帰ったりしない、から‥だから、皆なかなか傘に入れないの」
「‥え」
栖栗は目を見開いた。
知らなかったのだ。
英が、女子と一緒に帰らないということを。
けれど、入学式以降から、二人で一緒に帰っていたので、栖栗は何だか不思議な気持ちになった。
胸がきゅうっと締め付けられる、でも、それは不快ではない。
むしろ、嬉しい。
ふわふわと、した、温かな、感覚。
栖栗にとっては、この感情をそんなふうにしか言い表わせなかった。