成立事項!
そして、苛立ちを募らせたまま、放課後。
雨はやはり止まなかった。
それは自分だけではない誰もが分かっていたことだから、敢えて栖栗は何も言わなかった。
「じゃ、じゃあ、また明日‥!」
「うん、また明日」
ピンク色の可愛らしい傘を片手に、精一杯、手を振る瞳に栖栗もつられて手を振った。
彼女の背中を見送ったあと、自分の傘を探す。
「‥‥‥」
栖栗の傘は、水色と青の水玉模様がある少し大きめのビニール傘だ。
「‥‥‥あれれ」
今朝、それをさして来て、教室の向かい側の傘掛けにちゃんと掛けておいたのだが、どうにも見当たらない。
「どういうこと‥?」
ムッと眉を顰める栖栗だったが、すぐに原因が思い当たった。
我がペットちゃんの傘を巡った取り巻き女子の醜い争いの飛び火、あるいは、雨風で傘が壊れた族による犯行──‥と。
「さ、最悪‥!」
こんなことになるのなら、傘の柄に“市川栖栗”とでかでかと書いておけばよかったのだ。
言ったところで、傘が戻ってくるわけではないのだが。