成立事項!
 

外はまだザァザァと激しい雨が降る。
どうやら、アスファルトを打ち付ける水の矢は、とどまるところを知らないようだ。


「瞳ちゃんに入れてもらえばよかったわ‥」


帽子を深々と被り、栖栗は静かに教室へと戻る。


「そういえば、職員用の置き傘があるって言ってたわね‥」


椅子に座る手前で、ぼんやりと昼間の出来事を思い出す。
けれど、また栖栗は肩を落とした。


「‥‥傘、どこにあるのか分からないんだった‥」


そうして、崩れるように椅子に座る。

廊下からは、帰りが嬉しくてきゃあきゃあと騒ぐ女子と、寄り道先を考えている男子たちの賑やかな声。


もし傘を盗んだ犯人を見つけたら、死刑にするしかない。

帰って行く生徒たちを恨めしそうに見つめながら、雨の勢いが弱まるのを、待つ。


さすがの栖栗も、濡れて帰る趣味はない。

とゆうか、濡れて帰ったあとが面倒くさい。


教室はいつの間にやら、栖栗一人になっていた。

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