成立事項!
 

もうすぐ六時になる。

空は墨を零したように、真っ黒だった。


雨はまだ止まないし、勢力を衰えることを知らない。

結局、生徒会会議がある時と同じ時間になってしまった。
もし、傘さえ盗まれていなかったら、もっと、早く帰れることができたかもしれないのに。

教室は静かだった。
遠くから雨音。
微かに届くのは体育館から聞こえる体育部の声たち。

時折、携帯電話から音楽を垂れ流し、時間を潰す。

栖栗は、ぐんっと伸びをすると、机に頬を預けた。


はっきり言って、暇だ。


英を待っているときはいつもどうしていただろう、などと考えてみるが、そんなことはすっかり忘れてしまっていた。

英を待つことと、小雨を待つことではどうしてこんなにも、違うのだろう。


むなしい、苦しい、つまらない──‥


つまらないつまらないつまらない!


「‥‥帰る」


誰に言うでもなく、そう呟くと栖栗はスクールバックを片手に教室の明りを消す。

空っぽの教室。

誰かの置き傘を借りようとも思ったが、そんなものはなかった。


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