成立事項!
 
もしかしたら、盗まれたのではなく、置き傘と勘違いされたのかもしれない。

栖栗はそう思いながら、一人きりで長い廊下を歩く。

そういえば、帰りに、一人で廊下を歩いたのは、いつが最後だったろうか。


いつもは、隣りにいる。

隣りはいつも温かかった。


でも、今は?


隣りには何もない。

足音は一つだけ。



空は、ないている。



「‥‥‥今ごろ、」


──今ごろ、うちのチワワちゃんは女子と一つの傘に入って、よろしくしてるのだろう。


「あーもうイライラする!帰る!早く帰るっ!」


ズカズカとがに股で廊下を歩く。

女の子にあるまじき行為だが、イライラしているのだから仕方がない。
仕方がない、ということにしておく。


「まぁ素晴らしい雨ですことー!」


誰もいないのをいいことに、嫌味混じりに叫びながら靴を履き替えると、内履きを乱暴に下駄箱へ放る。

そうして、また改めて雨の勢いを目の当たりにしたものだから、栖栗はまた、イライラする。
にも関わらず、頭の中では、クソペットだとか、英に対しての悪態ばかりが湯水のように湧いてくる。

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