成立事項!
二人共、状況を判断することに相当の時間がかかっていた。
特に栖栗は、ショックを隠し切れず、青ざめたままだ。
昼間、瞳に見せたときの、あの痛々しいフォローがフラッシュバックする。
「ぷ、」
沈黙を破ったのは紛れもなく英だった。
吹き出しやがった。
しかも、必死に笑いを堪えている。
「あ‥っ」
栖栗は、恥ずかしくなって、妙に甲高い声を出す。
傍から聞いたら、それは、いやらしい声にしか聞こえなかったりするのだが、この髪型では色気も、何もない。
「あははははははは!!!!」
英の限界はすぐに訪れたようだった。
大体、笑いを我慢するという方が、無茶な話である。
傘がゆらゆらと大きく揺れて、そしてそこに伝っていた雨水が制服に飛び、丸い染みを描く。
「‥っ!」
ひんやりとした何とも言えない感覚に、栖栗はハッと、ようやく我に返った。
「っその‥っその髪‥!!!」
英は、片手で傘を持ち、スクールバックを持ち、そうしてもう片方の手で腹を抱えて、爆笑している。
栖栗は、それを見て、無償に逃げたくなった。