成立事項!
「関心してもらわなくて結構」
キッパリと言い放つと、栖栗は手摺に背中を預けたまま、その場に座り込んだ。
真新しい制服に錆が付くことになっても、きっと彼女は気にも止めず、それを着続けることだろう。
栖栗にとっては、それほど制服も学校もどうでもよかった。
そんなふうに思ってしまったのは、きっとあまりにもこの生活がありふれていて、地味だから。
期待という感情は時に恐ろしく、時に切ないものだ。
十数年生きていて、彼女はようやくそれを知った。
「‥あんまり調子に乗ってると退学になるかもしれないぞ」
英自身は、冗談で言ったつもりだった。
けれど、栖栗にしてみればその冗談は甘い甘い禁断の果実なのだ。
「それだけで退学になれるなら安いもんね」
体育座りをしながら、にぃっと笑う栖栗はまるで悪戯を企む子供のようだった。
でも、彼女は子供が持つような純粋な心を、もうとっくに捨ててしまっていて。
「は」
「だってそうしたらこの生活から抜け出せる。ありふれていて今までと変わらない地味な地味な生活から」
英は呆れた。
そこまでしてどうしてこの生活から抜け出したいと考えるのだろうか‥そして、それにしては何て幼稚な考えを持つのだろうと、横に座る彼女を見て思った。