H.T.
気がつけば、ロードの絶叫が止んでいた。しかし修羅の二文字は未だに青白い光を放っている。

ロードの顔を覗きこんだ。目が合う、焦点が定まっている。意識を失っているわけではないようだ。

「おい」

低く透き通ったアルトボイスでロードが声を掛けてきた。
アークは驚きを隠せなかった。ロードがこんな大人っぽい声を出したのは初めての事だ。

目付きもまるで別人だし、口調もいつもと違う。

「これを外せ」

命令口調で更に続けた。


「そうは、いかない」

「何故だ?」

「キャンディのエネルギーをこいつに転送して完成させないといけないからな」

アークは、動揺が表に出ないように努めた。

「そうか、残念だ」

ロードが諦めた風な言葉を口にしたので、ほっと胸を撫で下ろした。

「後悔するなよ」

ロードの声が聞こえたかと思うと、視界が黒くなった。
瞼を閉じたわけではない、体勢を崩したわけでもない。

痛みも感じない。
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