H.T.
「安心しろ、まだ視力を断っただけだ」

ロードの声が聞こえる。低くて綺麗な……。

真っ暗なスクリーンに修羅のごとき形相のロードが現れた。

青白い光を帯びた手で、勢い良くアークの胸部を突いた。

心臓をかする感覚?


実際に内臓を触られた事がないから分からないが、このえぐられて心臓あたりがひどく痛むのはそれと酷似しているに違いない。

アークは、あまりの激痛に膝から崩れた。


「殺気を当てただけで膝つくとは、ざまぁないな」

「殺気だと?」


アークは完全に狼狽していた。

軍に使われている立場上、戦場・反乱組織の隠れ家・敵拠点などに行く機会が多く、魔法科学の第一人者として前線に出て命の取り合いをやって来たのだ。

殺気・狂気・妬み・嫉みに対する免疫には自信があった。

なのにだ、自分より年下で殺生の経験もないカワイイだけの少女の殺気で膝をついたなど、認められるはずがなかった。
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