つきのくに
「隼人。」
「隼人。」
「隼人。」
「はや・・・・・」
「だあ!!うっせえ!!何なんだよ!!」

頭の悪い私は会話をするためには、何度も何度も隼人の名前を呼ぶことしか思いつかず、名前を呼び続けていたら、前を歩いていた隼人がこっちを向いて怒った。
又あの目。
「なんでもない。」
馬鹿みたい。傷つくなら最初から呼ばなければいいのに。
仲が良かったのは、前の話で、今私たちをつなぐものは、御三家と言う肩書きと海ちゃんだけ。
胸が熱で焼けそうなくらい話がしたかったのに、いざとなると何を話していいかわからない。
私たち、共有するものは海ちゃんだけだもの。
暗黙の了解で、私たちは海ちゃんの話をしないし、そうしたら二人の間に話題はなくなる。
結局言葉が出ない私は、下を向いて黙った。


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