つきのくに
帰ってきたことが気づかれないように、そっと自分の部屋に行こうとしていたら、客間からおばあちゃんと八重子おばさんが話している声が聞こえる。

「でも、本当に良かったわよね。」
「そうね。下手したら、お家取り潰しも世が世ならあったでしょうね。」
「本当に亡くなったのが、竹ノ本の子でよかったわよ。月宮の嫡男のぼっちゃんだったらこの神社大変なことになっていたわよ。死ぬ時に一緒にあの子遊んでいたんだもの。」
「あんまりそんなことを他言しないで頂戴。」
「伯母様。皆知っていることよ。あの子影でなんていわれているか知ってる?やっぱり子供を捨てて逃げた女の子供だって。あの子小さい頃から月宮家の坊ちゃんをたぶらかしてたじゃない?やっぱりあの子はこの神社の跡取りにはふさわしくないわ。」
「誰が跡取りにふさわしいかは、私と月宮当主様で決めます。あなたの関知するところではないわ。」
「だから、取り決めのときに私を月宮様に推してくださればいいのよ。」


気分が悪い。
私、影ではそんな風に言われているんだ。
おばあちゃんも私がそんな風に言われていたこと否定しないんだね。

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