つきのくに
悲しくなって、悔しくなった。
昔から、怒られたり、隼人と喧嘩して泣いていると海ちゃんが慰めてくれた。「錫。錫。」って呼びながら、頭をなでてくれた。泣き止んだら私はいつも海ちゃんに言うんだ。「ありがとう」って。
だから、悲しいことがあると海ちゃんに会いたくなる。
もう会えないと分かっていても。

私は音を立てないように自分の部屋に行き、制服であるセーラー服を脱ぎ部屋着に着替え、携帯を確認する。
麻美から無事帰れたかメールが来ていた。この子は、甘ったれてそうに見えるのに人のことをよく観察していて、気遣いが出来る子だ。
帰れたとメールして携帯を閉じる。
いつも携帯を開く瞬間、もしかして、隼人からメールが来ているんじゃないかって期待をしてしまう。
来る訳ないのに。
ベッド(お母さんにだいぶねだって買ってもらった。神社には似合わないとおばあちゃんの猛反対を受けた。)の上に寝そべって、しばらく麻美とたわいもない話をメールしていたが、そのまま睡魔に負けて眠ってしまった。

夕食もお風呂もまだなのに。


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