つきのくに
ゆっくりと浸かってからだを温めたかったけど、早く学校へ行く準備をしないと遅刻してしまう。

お風呂から上がって下着とキャミソールを着る。ヒヤッとした冷たい生地が肌をつたってぶる利とからだを震わせる。
髪の毛を乾かし、そろそろご飯を食べに行こうかと考えたら、今日は体育があることを思い出した。
体操服を持っていかなければ、前回忘れているため、しかられてしまう。部屋にとりに行き、ご飯を済ませようと、茶の間に行く。
私の家は、神社の中にあって、居住スペースと神社がくっついて出来ている。だから、いまだにシステムキッチンになんてないし、いまどきあんまりない茶の間なんてものがまだ現役バリバリで活躍している。
御三家は伝統を重んじるから、隼人も家も海ちゃんの家もいまだに古いままだ。
でも、古くても昔々に月ノ宮の人々を総動員して作ったらしい立派なお社はたまに修理が入るけれど十分に人が住める。

おばあちゃんは今の時間は、御神体様のところでお祈り?の時間だし、お母さんは一昨日から出張で東京に行っているから二人に会うことはない。

「錫子さん。忘れ物はないですか。」
「・・・・・・ないと思う。」
私はよく忘れ物をするから、車で椿さんに持ってきてもらうことは少なくない。注意をしているのだけど、何かしら忘れ物をしてしまう。
私が、自信なさげに答えると、椿さんがくすくすと笑って言う。
「信用しておきますよ。」

「はーい。行ってきます。」


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