つきのくに
「それにしても、最近急に冷えてきたよね。」
寒いと体で表すように、しのぶちゃんは両手をからだに巻きつけぶるりと震えている。

「そうだね。この道冬なんかはすごく寒いのよ。横が川原でしょう。」
私がそういうと、しのぶちゃんは川のほうを見た。
そして驚いたように呟きが漏れた。

「あ。」

私がしのぶちゃんが見ているほうへ目線をやると、心臓がどきりと音を立てた。


隼人がいた。


隼人は私としのぶちゃんを見つけるとまた一瞬、あの目をしたが、早足で学校へ向かっていった。

「隼人にい感じ悪。何かあったのかな?さっきあったときは普通だったのに。」

しのぶちゃんはいい子なんだけどちょっと鈍いのが玉に瑕だ。
どう見たって今のは、隼人が私を避けていったのに。
悪気のないしのぶちゃんの言葉にちょっと傷ついた。




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