つきのくに
「それに斉藤君だってそんなつもりじゃないわよ」
「じゃあどんなつもりよ。」
「私と単にお友達になりたいとか、それか藤神の名が目的だとか。」
「何いってんの。馬鹿ね男女間に友情なんて存在しないわ。」

それを聞いて私の胸はちくりと痛んだ。
「それに藤神の名が目的ってまだ斉藤君は中学生なのよ。」


「近づいてくるものは疑え。そういう風に教えられてきたのよ。」
昔から、家を守るために近づいてくる「外」の人間は敵と思いなさいと教えられてきた。
それに、人見知りであんまり話さない私のことを恋愛対象として好きだと言う男の子はいないと思う。

「あっ。麻美のことをそんな風に疑っているわけじゃないのよ。」

「そんなこと分かってるわよ。馬鹿ね。何年の付き合いだと思ってるの。」
何を馬鹿なことを言っているのというように麻美は笑う。
麻美のこういうところすごく好きだ。



「それより、斉藤君の件考えておいてね。
恋愛対象としてではなくても、たまには知らない人とかかわることも錫子には必要だわ。」




そういったところで担任が教室に入ってきて、朝のホームルームが始まったのでお開きになった。


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