つきのくに
はっとした瞬間サッカーボールがこっちへ飛んできた。
そうだ、今は、体育の時間だった。

私がぼうっとしていたせいで、ボールはころころ転がってコートの外出てしまった。
あわてていると、私がいたところよりコートの真ん中にいた私たちのチームのキャプテンが(っていっても体育の先生が適当に振り分けたチーム。)こっちに走ってきた。

「ごめん。ぼうっとしてた。」
「ドンマイ、ドンマイ。今のでこっちのボールになったから結果オーライだよ。」
「次からちゃんととれるようにするよ。」
「期待しとく。しっかりゴール守ってよ。」
「オッケー。がんばる。」
といっても私たちのチームは、私以外は運動神経のいい人が集まっているので、すでに10点差が相手チームとついている。だから、私がゴールを守ろうと奮闘してもしなくても試合の結果は変わりないと思うが。



ボールがコート内に蹴り入れられ、ゲームが再開した。
ほら、すぐに相手チームのゴールのほうへボールが運ばれていく。
私の出る幕などない。




校庭の端では男子が野球をやっている。
すごい盛り上がりようで、体育の授業なのに泥だらけになっている男子までいる。

私は、それをぼうっと眺める。




けれど、私の目は知らず知らずのうちに隼人を探している。
昔から、私は隼人を探すのがうまかった。探し出したらすぐに見つけてしまう。



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