つきのくに
「今日はどこに行く?海ちゃんがさっき行ってた涼しいところってどこ?」
ただ、立っているだけでもうっすら汗がにじむほどの暑さだ。
考えなしに遊んでいたら、倒れてしまうんじゃないかなんて心配してみる。


「俺んちは無理だから。
今、篝祭りの会議があってジジババが集まってる。」

隼人、ジジババって。
その会議、私のおばあちゃんも出てるんですけど。
「俺の家も無理かな。しのぶが熱出して寝てるから。」

「え?しのぶちゃん大丈夫なの?
病気?」

「大丈夫だよ。お医者さんはただの風邪だって言ってた。
すぐに熱も下がるだろうって。2、3日は安静にしなきゃいけないみたいだけど。」

「そっか。明日、お見舞いに行っても大丈夫?」
「うん。しのぶも喜ぶよ。」


話がそれてしまったことに隼人はイラついたのか、眉毛がつりあがってきてる。
怒る寸前のサイン。

「じゃあ、どこへ行こうか。ちなみに私の家も今日はだめなんだって。」
隼人が怒り出す前にあわてて話を元に戻す。
チラッと隼人の方を見ると、つりあがった眉毛はいつものようにきれいに弧を描いている。

よかった。

「外で涼しい場所って言ったら、森に行く?」
なるほど、森なら、このうだるような暑さも届かないだろう。


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