つきのくに
「きゅうじゅうく、ひゃーくっ!!」
百を数え終え、私は隠れた二人を探そうと歩き出す。
シャンシャンシャンシャン。
また、静寂を鈴の音が切り裂いている。
まるで、規則正しくある森に異質なものが入ってきたみたいに。
この森にとっては、私のほうが侵入者なのだ。
三人でいたときはそんなこと思わなかったのに、一人になると急に背筋が震えた。
まるで、誰かに見張られているように息苦しい。
月神様が見ているとでも言うのだろうか。
早く探そう。
海ちゃんは、私が考えることの裏をかいて隠れてしまうから、なかなか見つけ出せないけれど、隼人は違う。
誰でも思いつくような、たとえば家でしているときは押入れ、神社でしているときは木の陰みたいな平々凡々なところに隠れるから非常に見つけやすい。(本人は気づいてないのだけれど)
今だってきっと、木の裏か木の上にいる筈。
そう思ってうえを見上げる。
「隼人見っけ。」
ほらいた。
もうちょっとひねってくれないと探すほうとしても面白くないじゃないか。
まあ、今は一人が怖いから隼人から探したんだけど。(いつもは海ちゃんから探す。)
「もうみつかった。
やっぱ木の上は駄目か。」
そりゃそうだろ。
隼人は猿みたいにするすると木から下りてきた。
前世は猿だったに違いない。