つきのくに


「海を見つけに行くか。」
と、隼人はすたすたと先へ行ってしまった。
いやいや、鬼は私でしょう。











「あー見つかんねえ。
どこにいるんだ海は。」

こんな森の中隠れるところなんてねえだろと例のごとく隼人は文句をたらたらと垂れ流している。

「海ちゃんほんとにどこにいるんだろう。
そろそろ暗くなっちゃうよ。」



「海なんで今日に限ってこんなに見つかんねえんだ。」

今日に限ってではなく、いつも簡単には見つからないよ。

でも、もう暗くなってきてそろそろ家に帰らないと夜の森に子供だけでいるなんて危なすぎる。

「隼人。早く海ちゃん見つけよう。」


シャンシャンシャンシャン
「海ちゃん。出てきて。
暗くなってきたしもう帰ろう。」


シャンシャンシャンシャン。

声が聞こえるところにいる筈なのに海ちゃんは出てこない。
もしかして、熊に食べられちゃったとか・・・・・
不吉な想像が脳内から湧き出てくる。

海ちゃんに何かあったらどうしよう。

私が森に行ってつきのくにを探そうなんていわなければ。

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