つきのくに
寝起きの頭は働かない。
普段からあまり働いていない脳みそが、寝起きだと殊更に鈍くなる。
寝ていたらしい私は、上半身を起こし周りを確認する。
白いパイプベットに白のベットシーツと枕カバー。
ベットの前には白いカーテン。
ベットの横の濃い茶色の木で出来た棚には健康や性に関する、私たち中学生でも読みやすい押し絵がついた本がずらりと並んでいる。
見覚えがあるこの場所は、
「・・・保健室。」
何で、保健室にいるんだろう。
さっきまで体育をしていたはずなのに。
それに、窓からは朱がさした光が差し込んできている。
今は、もう夕方?
「起きたのかよ。」
突然カーテンの向こう側から声がした。
この声は、まさかそんなはずはない。
「開けるぞ。」
そういって、おもむろに開けられたカーテンの向こうにいたのは、
隼人だった。