つきのくに
いくら、研究者が調べたって、この村の土着信仰の「月神様」と御三家と呼ばれる、月宮家、藤神家、竹ノ本家のこと、そして「つきのくに」伝説くらいしか分からないだろう。
真実は、いつも闇の中だし、私だって、海ちゃんが死んだ理由は分からない。
真実と言うものは、知っていい人と知らなくていい人がいることくらい分かっているし、研究者の人達や町の人達は、月ノ宮の真実を知る必要はないし(実際私だってよく分からない。)、私は海ちゃんの死んだ理由を知る必要はないのだろう。


私たちの家は、月ノ宮御三家と呼ばれていて、私たちは、生まれた瞬間から、月ノ宮で一生を過ごすことを決められている。
海ちゃん、隼人、私。御三家の子供で同い年なこともあって、小さい頃から3人一緒にいた。
いっつも一緒だった。御三家の子供だからなんていうのは私たちには関係なく、ただ仲がよかった。
私と、隼人はよく口喧嘩をして、海ちゃんがそれをなだめて、その後絶対に私を慰めてくれた。よしよしって頭をなでながら。
隼人はよく海ちゃんに突っかかっていっていたけれど、海ちゃんはうまく交わしていた。海ちゃんが生きていたのは七歳のとき、つまり小学一年生のときまでだから、海ちゃんはすごいと私は思う。(隼人にこれを言ったらきっとものすごく否定されるだろう。)

隼人と私はよく口喧嘩をしていたけれど、決してお互いのことが嫌いだったわけじゃない。
私なんて、その逆なのだ。
つまり、好き。

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