つきのくに
廊下の突き当たりのこの家で一番奥にあるおばあちゃんの部屋。
「錫子です。」
そういって障子を開ける。
おばあちゃんは、お花を生けている途中だった。
橙色のその花は法月。
眼鏡をはずして、おばあちゃんは座布団を私に差し出し、自分も座布団に座る。
「来ましたね。そこに座りなさい。ご飯はちゃんと食べれました?」
「うん。ちゃんと食べたよ。」
「そう。それはよかった。」
ふわりと笑う。
「それはそうと、今日みたいなことはあまり感心できませんね。」
「はい。」
今日みたいなこと。
おばあちゃんが言いたいのは、隼人に送ってもらったことだ。
分かってる。それくらい。
「あなたは、あなたの事を快く思っっていない人々が付け込む隙を自分で作ってどうするのですか。」