つきのくに
私のことを快く思っていない人。
たとえば、八重子おばさんや、月宮本家、竹ノ本家にもいる。
私が神社を継いだときに不利益となる人のこと。



「ごめんなさい。私の不注意です。」
「隼人さんと仲良くするのはかまいません。
でも、あなた方は年頃の男女なのですから、誤解されるような行動は慎んでください。」

「はい。以後気をつけます。」


法月の橙が目に痛い。

「あることないことをいろいろと言われて傷つくのはあなたなんです。」


私は、何も言えずうつむいて膝を見る。
それは、私がこの月ノ宮にいる限り、永遠に付きまとう。

藤神の娘は、竹ノ本の子供を殺して、あろうことか月宮の若様をたぶらかして口封じをしていると。


馬鹿みたいな事だけど。



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