つきのくに
神社を出て、階段を下りる。
隼人の家、月宮本家の隅の小さな道の先に月ノ森がある。
もう、すっかり空は濃い紫色を描いて、星屑が輝く。
月が、すべてをあざ笑うように見ていた。
「錫?」
この・・・・声は、
「隼人?」
隼人だ。
どうして?
どうしてここに?
「どうして・・・・・?」
「こっちの台詞だ。倒れたばっかりだろう。
何してるんだよ。」
どうしてなんて。
優しくされたら、また勘違いをしてしまう。
ありえないのに。
ありえないのに。
『誤解されるような行動は慎んでください。』
そんなの無理よ。
だって、側にいればそんなこと考えられないくらい。
「そっちは月ノ森だろ。
何しに行くんだよ。
お前、まさか。」
「そう、
私、つきのくにに行くのよ。」