つきのくに
「え?」
「俺も行く。俺も、会えるものなら海に会いたい。」
そういって、隼人が私に向けて手を差し出す。
だめだと分かってる。
でも、私、隼人が好きなんだもの。
手を振り払うなんて出来るわけがない。
私の本当のお母さんも、駆け落ちするときはこんな気持ちだったのだろうか。
この罪悪感と、期待がせめぎあうような、気持ち。
私たちは、二人、手を取り合って、漆黒の森に入っていった。
夜の森は暗く音もない。
「奥」には電灯なんてものはないわけだから、森に人工光が届くはずもなく、明かりと言えば、月の光しかなかった。