つきのくに

「俺らは、後継者と言う立場にいるから、それが窮屈に感じられるけど、それを手に入れられなかったやつからしてみれば、贅沢な話だ。
いつか、俺らの考えかたの間に亀裂が入っていたと思う。」


シャンシャンシャンシャン。
鈴の音が響く。

私は、何もわかっていなかったんだな。
海ちゃんが死んで七年間。
私が追い求めていたのは、本当に海ちゃんの虚像だったんだな。

「でも、もし海が生きてたら、小さい頃のように仲良くありたいと思う。」


そうだね。
私もそう願うよ。
どんなに私たちの間に、考え方の差があっても、会えないよりずっとましだ。
海ちゃんの偽者で自分をごまかすよりもっとましだ。



どんどん、森の奥に入る。

もう、月が雲に隠れてしまったら、携帯についている懐中電灯で照らされた所しか見えない。
藍色なんてものじゃない。
漆黒だ。








でも、不思議と怖くはなかったんだ。
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