つきのくに
月の光が私たちを照らす。
なんだか、月光から音が聞こえてくるような気がする、周りから鈴の音以外の音が聞こえてこないせいか、


それとも、私たちを月があざ笑っているのか。


「お前、海に会ったら何を言いたいんだ?」


「海ちゃんにあったら?」

そんなの決まってる。
「ありがとうって言えなかったの。
海ちゃんが死ぬ前にいつもみたいに撫でてくれたのに、私ありがとうって言えなかったの。
といっても、そのあたりの記憶は未だに曖昧なんだけどね。」

何度思い出そうとしても、幕が張られたみたいに思い出せない。

後少しで思い出せそうになるのに、最後の一歩にいつも届かない。


「うん。」


「別にそうして罪を償おうとかそういうことじゃないの。
でも、そのときだけ言えなかったなんて悲しすぎる。」



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