つきのくに


一瞬、隼人が言っていることの意味が分からなかった。
何言っているんだろう。
そんな事あるわけないのに。
私が隼人を嫌うなんてあるわけないのに。


「そんなわけないじゃない。
私が隼人のことを嫌いになるなんて。」


私がそういうと、隼人は安心したように笑った。

私、今まで生きてきた人生の中で一番幸せかもしれない。

隼人が隣にいて、笑ってくれて。


それだけで何もいらないと思ってしまう。




私、薄情過ぎるね。海ちゃん。

でも、本当に幸せなんだ。
こんな些細な事を私はずっと望んできたんだもの。

これ以上望んだらきっとばちが当たってしまう。


「おい、あっちなんか光ってるぞ。」
隼人の声で一気に覚醒した。
光ってる?
こんな森の中で月明かり以外の光があるの?


うっすらだけど、木々の間から光が漏れている。

それを見たとき、一気に心臓がはねた。

心臓がぎゅっと音を立てて、縮まった気がした。





もしかして、
もしかして!!

< 80 / 97 >

この作品をシェア

pagetop