つきのくに
つきのくに
瞬間、私たちは何も言わずに走り出した。
まるで、そうするのが当然と言うように二人とも。
まっすぐ、光のほうへ。
木の間をすり抜けていくと、小さな湖のある場所に出た。
湖の周りから十メートルくらいは大きな木が生えておらず、そこは森の中にぽっかりと空いた場所になっていた。
ああ、これこそ私たちが求めていたもの。
「つきのくに。」
湖面に反射した月の光が、湖の周りに咲いている花々を照らして、きらきらと輝いている。
あしやすすき、われもこうやおもいぐさ、ふじばかまやなでしこ秋の花々が色とりどりに咲き乱れ、輝いている。
月が、この場所の絶対的王者だった。
月がすべてを輝かせ、この美しい景色を造っている。
昔、大昔の人はこれを見て、「つきのくに」ときっと名づけたのだ。
私が今見ているこの景色と同じものを見て。