つきのくに



空いている手で、とめどなく流れてくる涙をぬぐう。

何で、こんなに悲しいのだろう。


何で、こんな簡単なことに気がつかなかったんだろう。


きれい。風が吹くと湖面の月が揺れて乱反射している。
限りなく淡く美しく輝く月。


『あれ、錫泣いてるの。
僕が寝ちゃってたからだね。
ごめん、ごめん。泣かないで。』






「海ちゃん、ありがとう。」



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