つきのくに
「つきのくにってこういうことだったんだね。」
つきのくに。
満月がいっとう美しい夜に、現れると言う幻の国。
そこには、桜、梅、躑躅、水仙、牡丹に杜若と言った四季折々の美しい花々が咲き乱れ、幻想的に月は光を反射させ、濃い藍色の空とあいまってこの世のものとは思えないくらいに美しいと言われている。
そこでは、どうしても会いたい人に会え、話が出来ると言う。
「きっと大昔は、ここでお月見をしてたんだろ。」
「え?」
「鈴を持っていくのは、熊や野犬除け、俺の家には、死者に会えるって言うのは、死者があの世から来るほどきれいだからだって伝わってる。」
「そっか。
でも、不思議。
海ちゃんもどこかで同じ景色を見ている気がするの。」
たとえば月からなんて。
「そうだな。俺もそんな気がする。」