【短】聖なる夜を、君と。
目が覚めたとき、真っ暗だった場内は、眩しいくらいに明るくなっていた。
場内を埋め尽くしていたカップルたちも、もう誰ひとりいなかった。
代わりに、床の所々にポップコーンが散乱していた。
「あ、起きた?」
頭の上で声がした。
気付くと、私は彼と手を繋いだまま、彼の肩に寄り掛かって眠ってしまっていた。
ごめんね、と私は慌てて起き上がり、乱れた髪を指先で直した。
「全然。行こっか?」
彼はそう言って、そのまま私の手を引き、立ち上がった。
キュッと強く握られた私の小さな手は、彼の大きな手の中で、汗をかいていた。
―――これは、どっちの汗?