【短】聖なる夜を、君と。
映画館を出ると、まだ明るかった空は、もうすっかり暗くなっていた。
街が一層きらびやかになり、点灯されたイルミネーションツリーが人々の目を引いた。
彼は自分のポケットに、少し冷たくなった私の手を入れた。
彼の体温が、ポケットの隙間から、ふわふわと私を包んだ。
「俺、高校入ったときから、ずっと乃愛が好きだったんだ。」
ツリーを見ながら、彼は本当に優しい声で言った。
「乃愛って、クールっぽく見えて、中身ほんと可愛いし。それに、すっげーモテるから、俺全然自信なくてさ。だから、クリスマス一緒に過ごせるなんて、夢みたいだよ。」
ありがとな、って照れくさそうに笑う彼を見て、やっと気付いたんだ。
あなたが私の白馬の王子様だって。
そして、素敵なクリスマスをプレゼントしてくれた、私のサンタさんだって。
「どこ行きたい?」
照れながらそう言う彼の耳が赤かったのは、寒さのせいだけじゃない。
そんな彼の姿が、とても可愛く思えて、その耳元に口を寄せ、小声で呟いた。
「キス…したい。」
街は、クリスマス。
聖なる夜をカラフルに彩るイルミネーションツリーの下で、2つの影が1つに重なった。
メリークリスマス。
そして、ハッピーニューイヤー。
来年も、君と。
~END~