【短】聖なる夜を、君と。


ある日の放課後。

日直だった私は、職員室へ日誌を提出しに行った。

そこで担任の先生に雑用を任され、それがようやく終わった頃には、斜めに差し込む太陽が、校舎をオレンジ色に染めていた。


教室に戻るなり、私は首を傾げた。


私の席で、誰かが眠っている。

しかも、男の子。


私は、そっと近寄り、顔を覗きこんだ。


……あ。

この人、知ってる。


バスケ部のエース、神宮寺 奏多。


私の周りに、この人のことを好きな人が何人いることか。

必ずと言っていいほど、1日に1回は聞く名前。


まぁ、確かに…

騒がれるのも分からなくはない。


緩く着崩された制服。

長めの茶髪にメッシュが入った、オシャレな髪型。

どこか幼さの残る、可愛い顔立ち。


ひゅう、と開け放された窓から風が入った。

薄いカーテンをゆらゆらと揺らし、彼の顔にさらりと触れた。


―――まつ毛、長いなぁ…。


無防備な寝顔を向けて、眠っている彼に触れようとした。



< 3 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop