【短】聖なる夜を、君と。
ある日の放課後。
日直だった私は、職員室へ日誌を提出しに行った。
そこで担任の先生に雑用を任され、それがようやく終わった頃には、斜めに差し込む太陽が、校舎をオレンジ色に染めていた。
教室に戻るなり、私は首を傾げた。
私の席で、誰かが眠っている。
しかも、男の子。
私は、そっと近寄り、顔を覗きこんだ。
……あ。
この人、知ってる。
バスケ部のエース、神宮寺 奏多。
私の周りに、この人のことを好きな人が何人いることか。
必ずと言っていいほど、1日に1回は聞く名前。
まぁ、確かに…
騒がれるのも分からなくはない。
緩く着崩された制服。
長めの茶髪にメッシュが入った、オシャレな髪型。
どこか幼さの残る、可愛い顔立ち。
ひゅう、と開け放された窓から風が入った。
薄いカーテンをゆらゆらと揺らし、彼の顔にさらりと触れた。
―――まつ毛、長いなぁ…。
無防備な寝顔を向けて、眠っている彼に触れようとした。