【短】聖なる夜を、君と。
「何とか言えよ!」
3人の女のうち1人が、私に手を上げようとした、その時。
教室の扉が物凄い勢いで開いたと思ったら、ヒーローのように登場した男。
神宮寺 奏多。
「おい、何やってんだよ!乃愛に触んじゃねぇ!」
彼はそう言って、女の手を掴んだ。
―――来るの、遅いってば。
なんだか泣きそうになって、彼の制服の裾を掴んだ。
それに気付いた彼が、強引に私の手を引っ張り、教室を出た。
この前と同じ夕日が、見るもの全てをオレンジ色に染める。
私の手を握り、走っている彼も。
そして、彼に手を引かれ、走っている私も。