窓のない窓際
 
「……うん」


うん……ってそれだけ!?


「え……面白くなかった?」

「……」


そう尋ねると、水上は俺を見上げて意味深な表情を浮かべた。


怒っているような、悲しんでいるような……そんな表情。


そして、ふいっと俺から視線を外した。


「……つまんなかった?」

「……うん」


水上は前を向いたまま無愛想に答えた。


「……あっそ」


俺も水上から視線を外す。


「なら……つまんねーモン観せて悪かったな」


それからは険悪な空気が俺たちの間に流れた。


お互い無言のまま、特に目的地もなく歩く。


何度か水上に視線を落としたけど、水上は無表情で黙ったまま。


それが俺のイラ立ちの導火線に火を付けた。



 
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