窓のない窓際
その言葉を聞いた瞬間、導火線の火が消えた。
「だろ!!!?」
「ひゃ!?」
俺は思わず水上の手を握り締めた。
「俺、あの歌めちゃくちゃ好きなんだ!
誰が歌ってんのか知らねえけど、最高だよな!
曲調もイイ感じだし、超俺好み!
あの曲聴くために映画観るようなもんだよ本当に」
言い終えてからハッと我に返った。
やべ……。
俺としたことがつい熱く語ってしまった……。
「なんて……」
「私、あの歌手知ってるよ」
俺が流そうとしたのと同時に、水上が俺を見上げて笑った。
「インディーズなんだけど、最近人気出てきてるバンドの子だよ!
普段はロック系の激しい感じの曲が多いんだけど、映画のは大人しい感じだったね。
あのバンド、優しい曲もいけたんだあ……。
なんか意外だあ……」
水上は俺より熱く熱弁し終えると、ハッと口を手で押さえた。
「わ……。
やっちゃった……」
恥ずかしそうにうつむく。
「ごめんなさい。
私ってば、つい……」