窓のない窓際
 
女とCDショップにくる時は大抵欲しいCDがある時だけ。


欲しいCDを手に取って、あの言葉を待つ。


「買ってあげよっか?」


それが聞けたら用はおしまい。


さっさと店を出る。




でも、今日は違う。




「このアルバムの3曲目がすごくいいんだよ!」

「水上って本当に詳しいな!
てかこのバンド知ってる?
最近デビューしたばっかりなんだけど……」

「知ってるーっ!
私そのバンド、インディーズの頃から好きだったよ!」

「まじで!?
俺も!
や~、このバンド知ってる人いなくて寂しかったんだけど……さすが水上!」

「そのバンドちょっと知名度低いよね……すごくイイのに……。
でもこれからどんどん人気でると思うなあ」


水上とはとことん趣味が合う。


好きなアーティストが同じ。


普通の人が知らないようなマイナーなバンドが好きな俺。


そのバンドを知ってると言われた時は純粋に嬉しかった。


それどころか、水上は俺以上にいろんなアーティストを知っていて、片っ端からオススメを教えてくれる。


男友達と話しても、ここまで趣味の合う奴はいない。


多分、水上とならこのまま何十年もCDショップにいれる気がする。


いや、もしかしたら何十年あっても話し終わらないかも……。


すげー楽しい……。



 
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