窓のない窓際
 
水上に教えてもらって、俺はあの映画の挿入歌のCDを2枚買った。


「はい」

「なに……?」


そしてその1枚を水上に渡す。


「あの映画の曲!
2枚買ったから1枚やるよ」

「え!?
そんな……いいよ……!」


水上は俺にCDを押し返す。


「いらないって言われても……俺だって2枚もいらないし……」

「私だって……」

「あ、そ。
ならもったいないけど捨てるしかないか?」

「それは……!」


俺はCDで水上の頭をポンと叩いた。


「お前さあ、いらないって言うなよな。
これでも俺、言われる度に傷ついてるんだぜ?」


そしてCDを水上のカバンの中にそっと差し入れた。


「思い出だよ、思い出!
これ聴いたら今日のこと思い出すだろ?」


今日のこと、思い出して欲しい。


これを聴く度に、俺のこと思い出して欲しい。


だからプレゼントした。


今日のこと、忘れさせないために……。


俺がニコッと笑うと、水上は真っ赤になって下を向いた。


「ありがと」


小さかったけど、確かに聞こえた水上の声。


「……嬉しい」


 
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