窓のない窓際
 
「あ……駅まででいいから……」


それから俺たちは無言のまま駅まで歩いた。


かける言葉を探しているうちに、駅に着いてしまった。


駅に着くと、笹岡がいた。


「あ、梨華!」


俺たちの姿を発見すると、笹岡は小走りでやってきた。


「サト……?」


水上が俺の手を離す。


「どう?
大丈夫だった?」

「……」

「……そっか」


水上の表情から笹岡は何かを理解したように頷いた。


「宮本」


笹岡が俺を見定めるような目で見つめた。


「……今日は梨華のことありがとね」

「……」

「じゃ、うちら帰るから」


そう言って笹岡は水上の手を握って改札に向かっていった。


水上は笹岡に手を引かれながらゆっくり歩いていく。


途中、何度か振り返った。


手を振ろうと片手を上げた。


けどすぐに下ろした。


だって、振っても水上には見えないだろうから……。


振り返った水上の目に、俺は映ってないんだ。



 
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