窓のない窓際
「そうだ……あの時も……」
俺は学校での出来事を思い出した。
『私はあなたと仲良くしたくないです』
あの言葉から動き出した俺の想い。
校内じゃ俺のこと知らない奴はいないと思ってた。
だって俺、顔いいから。
俺に言い寄られて拒む女は今までいなかった。
だから水上のことも簡単に落とせるって思った。
でも、水上は落ちなかった。
それは……。
「俺の顔、見えてなかったんだな……」
頭の中に水上の悲しそうな顔だけが蘇る。
『何見てんの?』
『……』
『空見てんの?』
『……』
『曇ってるね』
『……』
『あ、鳥』
水上はいつも窓の方に顔を向けていた。
でも、それは景色を見ていたんじゃない。
あの寂しそうな表情の意味がようやく分かった。