窓のない窓際
えーっと……んーっと……。
「おっ、おっす!
ア……アユミ」
すると女に見えないように寿也がドスッと俺の背中をど突いた。
「バカ……!
サユリちゃんだろ!
一文字も合ってねーよ!」
寿也が小声でツッコむ。
「あ……そうだった!
えっと……おっす、サユリ!」
「……あたしチカだけど」
「え……?」
俺が横目で見ると、寿也ははにかみながらペロッと舌を出した。
「“イッケネ☆”じゃねェエエエェ!
一文字どころか文字数すら合ってねえじゃねえかああああああ!」
再び取っ組み合いになる俺と寿也。
「瑞希」
女に腕を引っ張られた。
「勝手に話聞いちゃった、ごめん。
昨日、水上さんとデートしたって本当?」
「は?
デートっていうか……うん、まあ、デートって言っちゃデートかな」
やべ、思い出し笑い。
そういえばデートしたんだよな昨日、水上と。
昨日のこと思い出すと思わず口元が緩む。
可愛かったな、水上の私服……。
レストランで「あーん」とかしちゃったりしてー……。
へへへへへへ……。
ニヤニヤと笑う俺の顔に女は携帯を突き出した。
「見て」
……は?
映し出されたメール画面に目を凝らす。
『日曜日な(^∇^)
了解~。』
見慣れた顔文字……。
もしかして……。
送信者の名前を見ると、案の定『宮本瑞希』、俺の名前。
「日曜日、一緒に遊園地行くって約束したよね?
しかも1ヶ月前から」
あー……そういえば約束してたような……。
でも1ヶ月前の約束なんて覚えてられるわけねえだろ、普通。