窓のない窓際
 
えーっと……んーっと……。


「おっ、おっす!
ア……アユミ」


すると女に見えないように寿也がドスッと俺の背中をど突いた。


「バカ……!
サユリちゃんだろ!
一文字も合ってねーよ!」


寿也が小声でツッコむ。


「あ……そうだった!
えっと……おっす、サユリ!」

「……あたしチカだけど」

「え……?」


俺が横目で見ると、寿也ははにかみながらペロッと舌を出した。


「“イッケネ☆”じゃねェエエエェ!
一文字どころか文字数すら合ってねえじゃねえかああああああ!」


再び取っ組み合いになる俺と寿也。


「瑞希」


女に腕を引っ張られた。


「勝手に話聞いちゃった、ごめん。
昨日、水上さんとデートしたって本当?」

「は?
デートっていうか……うん、まあ、デートって言っちゃデートかな」


やべ、思い出し笑い。


そういえばデートしたんだよな昨日、水上と。


昨日のこと思い出すと思わず口元が緩む。


可愛かったな、水上の私服……。


レストランで「あーん」とかしちゃったりしてー……。


へへへへへへ……。


ニヤニヤと笑う俺の顔に女は携帯を突き出した。


「見て」


……は?


映し出されたメール画面に目を凝らす。


『日曜日な(^∇^)
 了解~。』


見慣れた顔文字……。


もしかして……。


送信者の名前を見ると、案の定『宮本瑞希』、俺の名前。


「日曜日、一緒に遊園地行くって約束したよね?
しかも1ヶ月前から」


あー……そういえば約束してたような……。


でも1ヶ月前の約束なんて覚えてられるわけねえだろ、普通。



 
< 153 / 165 >

この作品をシェア

pagetop