窓のない窓際
 
すれ違い様に俺たちを凝視する生徒。


当たり前か。


お姫様だっこして階段駆け降りてる奴なんていたら、誰だって見るよな。


水上は怖いのか恥ずかしいのか、ずっと目をギュッと閉じていた。


「みんな見てる……?」


水上が尋ねる。


目を閉じていた理由はどうやら後者の方らしい。


「見てる見てる!
もっと見せつけてやろうぜ!
階段もう2、3往復する?」

「ば……ばかっ!」


キュン。


水上が「ばか」って言ったー!


……って俺そろそろ重症?


必然的に水上の腕は俺の首に回される。


体が密着しているせいか、水上の心臓の鼓動が俺の胸に伝わる。


ドクドクドクドク、と物凄い速さで鼓動を刻んでいる。


それに触発されて、俺の心臓も大きな音を立てる。


あー……俺ヤバい。


どうかこの心臓の音が水上に聞こえていませんよーに。


 
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