窓のない窓際
「到着ッ」
1階に着き、俺はそっと水上を下ろした。
「あり……がと……」
ヨロヨロと足どりがおぼつかない水上の腰に手を当てて体を支えてやる。
「まだ体が浮いてるみたい」
水上はそう言って苦く笑いながら、俺の手に少しだけ体を預けた。
水上の体重がかかった手に力を入れる。
「そういや俺、お姫様だっこしたのって初めて」
水上が「え?」と首を傾げる。
つまり俺のお姫様は水上だけ……ってオイ!
んな恥ずかしいこと言えるか!
いや今まで散々言ってきたけど!
けど……。
本命な子にはこういうのって言えねーもんなんだな……。
「あ、されたことはあるんだけどな!」
……寿也に。
小学6年の時の運動会、アイツは足を怪我した俺をお姫様だっこで保健室まで連れて行った。
不覚にも寿也をカッコいいと思ってしまった瞬間だった。
まあその後“瑞希と寿也はデキてる”って噂が学校中に広まって大変だったんだけど……。
なんて今では笑い話なんだけどな!
そんな話をすると、水上は楽しそうに笑った。
「寿也くんって同じクラスの?」
「そーそー。
俺の神友(←瑞希造語)」
「そういえば始業式も遅刻して来たよね2人」
「え゙!?
覚えてるの!?」
「うん。
宮本くん、先生のこと誘惑してたよね?」
「うあぁああぁ!
してねえ!
いや、してません!
あれは……!」
そんな感じで会話は弾んだ。