窓のない窓際
 
下駄箱の前で俺はふと立ち止まった。


「ところで水上って自分で靴履けるの?」


俺がそう訊くと、水上はしばらく悩んだ後、こくんと小さく頷いた。


「うそつけっ」


俺は水上の頭を軽く小突いて、水上の出席番号が書かれた下駄箱を開けた。


しゃがんで水上の靴を脱がせる。


「わあ!?
ちょ、宮本くん……!
そこまでしてくれなくていいよ!
靴は自分で脱げる!」


慌てる水上を無視して俺は靴を脱がせた。


外靴と上靴を交換して、下駄箱を閉める。


「お前の足小さ」


細い足首に触れると、水上の体がピクッと揺れた。


それにしても細い。


ちょっと力を入れたら折れちまいそうだな……。


外靴を履かせて、俺はゆっくり立ち上がった。


「よし!」


水上は恥ずかしそうに唇を噛んで下を向いている。


「マジでお姫様になった気分だろ?」


俺がそう言って笑うと、水上は真っ赤な顔して目を見開いた。


「ありがとう……」

「どういたしまして!」


そして俺は再び水上の手をギュッと握った。


 
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