窓のない窓際
水上が繋いでいた手をパッと離した。
「和樹、ごめんね。
今日はこの人と帰るから」
「え……?」
男と目が合った。
相手の真っ黒な瞳が俺を映す。
まあ、確かに顔は良いっちゃあ良いな……俺ほどじゃねーけど。
「あ、そうなんだ……。
分かった」
「うん……ごめんなさい」
水上はさっきからずっと下を向いたままだ。
我慢出来なくて、俺はジリッと前に出た。
「初めましてー」
水上がギョッと目を見開く。
「俺、宮本瑞希。
水上のクラスメイトで彼氏候補なんですけどアンタは?」
思いっきり敵意むき出しの無愛想な低い声で相手を威嚇する。
しかし、ヤツは怖じ気づくどころか、冷静に俺を見据えていた。
「初めまして。
修英中学3年の藤本 和樹(フジモト カズキ)です。
いつも梨華が助けてもらってるみたいで、ありがとう」
そう言って口元だけに微笑みを浮かべた。
まるで下等な生物を見て嘲ているかのような微笑み。
き……気に食わね─────────ッッッ!!!!!