窓のない窓際
 
水上が繋いでいた手をパッと離した。


「和樹、ごめんね。
今日はこの人と帰るから」

「え……?」


男と目が合った。


相手の真っ黒な瞳が俺を映す。


まあ、確かに顔は良いっちゃあ良いな……俺ほどじゃねーけど。


「あ、そうなんだ……。
分かった」

「うん……ごめんなさい」


水上はさっきからずっと下を向いたままだ。


我慢出来なくて、俺はジリッと前に出た。


「初めましてー」


水上がギョッと目を見開く。


「俺、宮本瑞希。
水上のクラスメイトで彼氏候補なんですけどアンタは?」


思いっきり敵意むき出しの無愛想な低い声で相手を威嚇する。


しかし、ヤツは怖じ気づくどころか、冷静に俺を見据えていた。


「初めまして。
修英中学3年の藤本 和樹(フジモト カズキ)です。
いつも梨華が助けてもらってるみたいで、ありがとう」


そう言って口元だけに微笑みを浮かべた。


まるで下等な生物を見て嘲ているかのような微笑み。


き……気に食わね─────────ッッッ!!!!!


 
< 162 / 165 >

この作品をシェア

pagetop