窓のない窓際
 
「お兄ちゃん!」


家を出ようとした瞬間、後ろから聞き慣れた声に呼び止められた。


「ん?
ああ、なんだ瑞穂か。
俺もう行くわ。
じゃーな」

「待ってお兄ちゃん!
朝ご飯は!?」

「あー、いらない。
学校でパン買うから」

「でも……!
実穂(ミホ)お姉ちゃんが、お兄ちゃんの分も朝ご飯作ってくれたよ!」

「何?
昨日実穂帰ってきてたの?」

「うん。
あ、静希(シズキ)お兄ちゃんも……」

「で、2人は?」

「お兄ちゃんとお姉ちゃんは瑞穂が起きる前にお仕事行っちゃったし、お父さんもさっきご飯食べないで出てったの」

「ふーん……」


って、時間!!!


「瑞穂ごめん!
やっぱ俺もう行く!
遅刻する!」

「瑞希お兄ちゃん……」

「じゃあな!
あ、家出るときちゃんと鍵閉めてけよ」


瑞穂には悪いけど、遅刻はしたくない。


瑞穂と目を合わせないようにして家を出た。


胸が痛む、ってこういうことかー。


 
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