窓のない窓際
窓際の女の子
うおお……寒い寒い!
「キムチ鍋!
火口付近!
サウナ!
貼るホッカイロ!
熱海!」
「……んだよ、それ。
うっせーな」
「だってさみぃじゃん!?
だからホラ、熱い言葉唱えりゃあったかくなると思って!」
「お前、熱海って何だか知ってんの?
地名だぞ、地名。
つーかそれに熱海にだって冬は来るんだから、いくら地名が熱くたって寒い時は寒いんだよ」
桜がポツリポツリと咲き始めた4月上旬。
俺は今日から高校3年生になる。
「ていうか今日、そこまで寒くねーだろ」
「は?
めちゃくちゃ寒いだろ!
おい寿也(トシヤ)、お前大丈夫か?
熱あるんじゃね?」
「お前、熱出たら熱くなると思ってんの?
熱出たら普通は逆に寒気すんだよ。
お前の方が大丈夫か?
お前こそ熱あるだろ」
4月と言えど、朝方は少し肌寒い。
そんな冷たく張りつめた空気の中を、ガキの頃からの幼なじみである寿也と2人で登校中。